「タリバンの復権」しかり、昨今世界中でメディアの未来予測が外れているのはなぜか?【中田考】
「隣町珈琲」中田考新刊記念&アフガン人道支援チャリティ講演(後編)
同じように、今「タリバン政権はダメだ」とさかんに言っている人たちは、実は中立の立場から言っているのではありません。これまでタリバンを「あいつらはテロリストだ」と言って、アメリカの傀儡のカルザイ、アシュラフ・ガニー政権とグルになって3兆ドルにも及ぶと言われる復興資金を蕩尽し、占領者として治外法権を享受し、アフガニスタンの民衆に自分たちの価値観を押し付け、数万人のアフガニスタン国民を殺し、結局アフガニスタンを破綻国家させた当事者、タリバンに敗北した「戦犯」たちがそう言ってるわけです。だから全く信用できないのです。
トランプが正しかったとは少しも思いませんけれども、でもリベラルを自認する人たちの「トランプが大統領になるわけがない」という未来予測・現状認識が完全に間違っていたことは明らかです。イスラーム学者として言いますと、同じように、イスラーム世界で学界やメディアを含むアメリカのリベラルな権力がやっていることは、見事に全て失敗しているのです。それが白日の下にさらされ、誰の目にも疑いの余地なく明らかになったのが今回のタリバンの復権だったわけです。
■現在の世界を理解する基本
さて、我々が現在の世界を認識する上で非常に重要になるのは、よくも悪くも西欧がかつていかに強かったのかを理解することです。今でも我々の世界は基本的には西欧文明であって、もちろん我々はそこから多くを受益しています。こうしてインターネットで講演を見たり記事を読んだりできるのも、全て西欧文明のおかげです。
しかし、我々が現在、西欧文明の中で生きているのは、実は19世紀、西欧が世界を文字通り支配していた時代があったからです。その時代にいかに西欧が強かったのか、今の我々には殆ど認識できないですが、それを理解しないと現在の世界を正しく認識することはできません。
今でこそ西欧は「ポリティカル・コレクトネス」とか「少数派の権利を尊重しよう」とか言っていますけれども、19世紀当時、我々アジア人が人間と思われていたかどうかも微妙ですし、アフリカまで含めるなら人間と思われてすらいなかった、猿の仲間だと思われていた人が大勢いました。アジアには中国やオスマン帝国があったんで、とりあえずは人間とは認めるけど、「同じ人間」ではなく、「我々とは違う劣った人間、野蛮人だ」という風に思われていたわけです。
19世紀、世界のほとんどが西欧の植民地であって、その地域の人々には人権がなかった状態でした。
形だけでも独立を保っていたのは、巨大な中国とオスマン帝国、それからロシアやイギリスの緩衝国であったイラン、そしてアフガニスタンです。アフガニスタンは一時期大英帝国に占領されましたけれども、実は戦争によって独立しています。私が知る限り、当時の大英帝国を相手に戦争をして独立を勝ち取った国は、世界でもアフガニスタンしかありません。
日本やタイ、エチオピアなども一応独立はしていましたが、あくまでも政治的にうまく立ち回ったことでなんとか保ったものです。本当に戦争してイギリスに勝ち、追い出したのはアフガニスタンだけなんです。
19世紀はヨーロッパが世界中を支配したヨーロッパの世紀であり、アジア・アフリカの全ての人間はヨーロッパ人より劣った人間として支配されていた時代でした。しかし20世紀に入ると、ヨーロッパは第一次世界大戦と第二次世界大戦によって自滅します。そして漁夫の利を得たアメリカが世界を支配したのが20世紀という時代です。
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